まずは、「マイナスの症状をプラスに転換する(1)(2)(3)(4)(5)」をお読みください。
 
受け身型と孤立型のアスペルガー、不注意優勢型ADHDに多い傾向ですが、臨機応変に動くことができず、予定が急に変更になったとき、ちょっとした失敗をしてしまったときなど、一気にパニックになってしまう人がいます。

もちろん、しっかり下準備していたイベントの予定が当日急に変更になったような場合、誰だって焦ります。
しかし、そういうレベルの話ではなく、電車に乗り遅れた、会社についてから腕時計を忘れたことに気づいた、翌日の打ち合わせの予定を1時間遅らせてほしいと連絡が入った、といった些細なことであっても、心臓がバクバクし、冷や汗が吹き出し、大きく動揺してしまうのです。

これは、一つ一つの予定変更や失敗について、なんとか乗り切ったあとで、
「電車が少し遅れたって、特に影響はなかったじゃないか」
「時計を忘れても、スマホで時間を確認できたじゃないか」
「打ち合わせの時間が遅れた分、前もって資料を見直せたじゃないか」
と言葉にして確認することによって、予定変更や失敗に対して大袈裟に構えてしまうという認知の歪みを矯正していくことが可能です。

予定変更や失敗の場数を踏み、認知の歪みを一つずつ丁寧に正していくことで、ちょっとぐらいのことにはあまり慌てずに対応できるようになっていきます。

この予定変更に弱いという症状は、臨機応変に対応できないというマイナス面を持つ反面、規則正しい繰り返しにはめっぽう強い、というプラス面を持っています。

仕事をしていると、ルールがきっちり決まった単調な作業というのは、案外多いものです。
そういった単調な作業は、普通、すぐに飽き、時間がたてばたつほど精度が落ちていってしまいます。
しかし、このタイプの人は、ルールの決まった単調作業がとても得意で、いつまでたっても飽きることなく、淡々と黙々と作業を続けることができます。
決してだらだらやっているわけではなく、意欲的に取り組んでいるため、作業を続けていくうちに、工夫のしどころが見えてきます。
そして、作業マニュアルをより効率的に改善するなど、組織の一員としてしっかりとその役割を果たしていきます。

(つづく)

 

【発達障害とどう向き合うか】(実務教育出版)