基本的に、発達障害を持つ人は、アスペルガーであれADHDであれ、被害妄想が強い。

特に理由もなく否定的な思考を繰り返したり、過去の失敗が急にリアルに思い出されたりして「ああ、どうせ自分は…」みたいな気持ちになっていく。

年がら年中これの繰り返しです。

このネガティブな思考と記憶の反芻をやめるには、どうしたらよいのでしょうか。

とにかく「こんなことを考えちゃいけない」とは思わないこと。
こう思っている限りは、絶対に反芻はやめられない。
逆に、反芻が強化されてしまいます。

というのも、たとえば「真っ赤なキリンのことを考えないようにしましょう」と言われたら、どうですか?

たぶん今までの人生で、真っ赤なキリンのことなんて考えたことがないと思います。

でも、「真っ赤なキリンのことを考えないようにしましょう」と言われた途端、真っ赤なキリンのことを考えないほうが難しくなってしまうのです。

ネガティブな思考の反芻も、これと同じ。

「考えちゃいけない」と思えば思うほど、強く、しぶとく、頭の中で繰り返されてしまいます。

反芻をやめるには、「考えちゃいけない」ではなくて、頭の中で他人事のように冷静に捉えるようにしましょう。

それには、実況中継テクニックが有効です。

頭の中に浮かんだ考えを、特に感情をこめず、たんたんと語るのです。

「今、運動会のかけっこで転んだことを思い出したんだ。なるほどな」
「バイトの面接で落とされることを妄想しているんだ。そうか、そうか」
といった具合です。

できれば、声に出して言えると効果的です。
声に出すのが状況的に難しければ、心の中で実況中継を行えば大丈夫です。

他人事のように実況中継をする、ただこれだけのことなんですが、繰り返し行うことで、だんだんと被害妄想はおさまっていきます。

初めはなかなかうまくいかないかもしれませんが、何事も練習です。

うまくいかなくても「ああ、ダメだ」とか思わずに、気長にトライしましょう。

そうすると、最初は四六時中被害妄想が止まらなかったのに、1分、5分、10分、1時間、3時間、半日、1日、という感じで、思い浮かばない時間が増えていきます。

 

【発達障害とどう向き合うか】(実務教育出版)